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東京競売ウォッチ

2014年10月28日

第252回 千駄木の築16年のマンション

 10月9日開札では、また100%競落で、一競落物件について約18本の入札という盛況ぶりであった。

 さて競売入札において、売却基準価額を入札価格設定の参考にするのが通常である。しかし、このところは、売却基準価額からかけ離れた入札価格が登場して驚かされる。

 この日2番目に入札が多かったのが東京メトロ千代田線「千駄木」駅徒歩約11分に立地する築16年弱のマンション。専有面積約17坪の2LDKのこの部屋の売却基準価額は999万円であったが、これに対し入札は41本集まり、最高価3,158万円で、何と売却基準価額の3.2倍に上った。これほどの上乗せでの競落であるが、この物件には20万円近い滞納管理費等もある。さらに動産が大量に存在していて、水回りの設備等についてもかなりの損傷が予想され、相応の修理費も見込まれる。

 それらのコストを考えれば、取得に掛かる総額は3,400万円を超えてしまい、専有面積坪単価にして200万円以上になるだろう。この物件を再販売する場合、専有面積坪単価は少なくとも230万円はにらむことになるが、ここ最近の同エリアの成約事例から考えても、かなり高水準に思えてくる。

 ただ売却基準価額と乖離した高い競落価格になるのは、そもそも売却基準価額の水準が周辺の相場にそぐわないということもあるだろう。これは東京地裁における競売物件のマンション評価に取引事例比較法が採用されていないことに原因がある。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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