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東京競売ウォッチ

2016年6月14日

第326回 人気の東横線の駅至近の商業地

 競売の落札価格は不良債権担保の任意売却不動産よりも価格が高くなる場合がある。それは競売ゆえに、占有排除が法的に行える安心感があるからである。

 5月24日開札では、東急東横線「学芸大学」駅徒歩約2分に立地する店舗事務所に大量65本の入札があった。この物件の土地は駅の出口から真っ直ぐの通り(幅員約5.4m)に面し、かつ角地(側方道路幅員約6.1m)という好立地である。

 土地面積は19坪弱で、建物は築年が古い事務所と店舗で延床面積は約19.5坪である。この建物は立地や許容容積率(360%強)から考えて、取り壊し、再建築する方が有効利用であろう。

 この物件の売却基準価額は4,156万円で、これを土地面積で割ると、1坪当たり約220万円である。この価格はこの物件の正面路線価(1坪約240万円)を少し下回っている。

 さて、この物件の競落価格はと言うと、2億1,000万円であった。売却基準価額の実に5倍を超える水準である。対路線価でも4.6倍強になる。人気の東横線の駅至近の商業地という得難い立地ということで、高い上乗せ率となったのだろう。

 しかし、このような好立地物件であれば、これまで任意売却の話は多くあったに違いない。結局競売となったのは、所有者・債務者の物件明渡について任意の話合では決着が付かなかったからであろう。競売であれば、占有者は引渡命令の対象であるので、むしろ思い切った入札価格設定ができたのかもしれない。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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