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東京競売ウォッチ

2019年7月2日

第468回 高すぎる売却基準価額のマンション!

 相変わらず高水準の競落状況である東京地裁ではあるが6月20日の開札では珍しく平成以降の築年のマンションが1本の入札も無く特売に回った。このマンションはつくばエクスプレス「六町」駅徒歩約9分に立地する3LDKの部屋である。

 平成5年3月に建築され、専有面積は約15.3坪である。占有者は賃借人であるが買受人に対抗できない6か月明渡猶予対象者である。従って再販会社は入札を検討できる物件と考えられるが、実際には応札が無かった。それというのもこの物件の売却基準価額1622万円(最低売却価格である買受可能価額は1297.6万円)が高過ぎたからのようだ。

 ちなみにレインズで類似マンションの成約実績を見ると、同程度の築年で専有面積坪単価は120万円くらいである。とすればこの物件の市場価格は1830万円程度になる。ただこのマンションは高圧線が上空を走っているので、そこまでの売価にはならない気がする。

 そんな実態であるが、この物件の評価書において市場価格は2090万円とし、ここから競売減価等を施して先の売却基準価額が算出された。明らかに市場価格より1割強は高い水準で正常価格(市場価格)が設定されている。これまでマンションの評価は東京地裁では市場価格よりかなり低いケースが多かったが、最近はこの例のように高目に誘導されている気がする。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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