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東京競売ウォッチ

2009年8月24日

第5回 “安すぎる”売却基準価額

 8月6日開札では、またまた今年最高の入札本数の記録が塗り替えられた。

 その物件は東急目黒線「武蔵小山」駅徒歩7分に立地する築12年で専有面積約15.5坪の 2LDKのマンションであった。この物件の売却基準価額は1,001万円であったが、これに対し 69本もの入札があり、最高価2,759万円にて落札されていった。

 これほどまでの大量入札を生む原因に、一つには売却基準価額がかなり低い水準で出ていることにあろう。 この物件などは売却基準価額の2.7倍超での落札であったが、その落札価額は周辺の販売事例と比較すれば、 さほど驚く水準ではない。

 この物件周辺の他の売り出し事例を見れば、専有面積1坪単価は220万円強であり、これから推して 坪単価200万円以上では成約されそうである。当該物件に当てはめれば、3,000万円強になる。ここから 滞納管理費などを控除し、競売減価(3割ほど)を施して売却基準価額を導くと、少なくとも 2,000万円は超えることになる。

 しかし、実際の売却基準価額はその約半分である。新たな競売参加者が多い中、これでは強烈な安さに 応札者が多くなるのも頷ける。売却基準価額の算出にあたって、公示地価などから導く積算価格や、 賃料を想定しての収益価格で決定しているが、これが現実と乖離しているのである。

 マンション、とりわけ実需向けのファミリータイプの売却基準価額については、取引事例も 斟酌すべきではないかと思う。安すぎる売却基準価額は応札者を極端に増加させるだけではなく、 無剰余取消をいたずらに増やしてしまいかねない。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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