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東京競売ウォッチ

2016年8月16日

第335回 新小岩のマンション4LDK

 近時、新築分譲マンションの売れ行きに陰りが出ている。特に郊外型のマンションが芳しくないと聞く。そんな中で、駅からの距離がある物件が、高値落札されたのに目を引かれた。

 そのマンションはJR総武本線「新小岩」駅徒歩約20分に立地する。築約20年を経過するこのマンション、対象住戸は専有面積約26坪の4LDKである。この部屋の売却基準価額は1,256万円であったが、これに対し、入札24本が集まり、最高価2,785万円にて再販業者と思われる会社に落札された。売却基準価額に対し120%を超える上乗せ率である。

 ところで、この物件は立地条件が駅から遠く、劣るものの、専有面積が広く、4LDKで部屋数も多い利点がある。しかもこの物件には12坪超のルーフバルコニーがあり、ファミリーがゆったりと住める魅力を感じる。

 現在この物件の付近に、このような大きな間取りの物件は築20年以内であると数件しか販売登録がレインズにはない。しかも駅から近いところでは、5,000万円程度の値付けがなされているので、駅から遠いとはいえ、3,000万円台中盤で再販できれば価格的の魅力はありそうである。

 しかし、このマンションには220万円程度の滞納管理費等がある(5年以上の滞納であるが、管理組合が法的請求済みで時効にかかる部分はない)。このコストを考えると、内装の費用等の多寡により、確保できる再販利益は大きく変わってくるだろう。

 大きな上乗せ率でないと競落はおぼつかない状況の中、再販業者はリフォーム費用など商品化コストの見積りを精査せねばならない。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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