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東京競売ウォッチ

2024年09月03日

第711回 足立区の借地権建物を地主が高額落札

 競売市場では借地権建物の割合が一般市場に比べると多い。これは不良債権化した債権の担保が借地権建物であると、任意売却による処理がしにくいということがある。それは譲渡にあたり、地主の承諾を得ることが必要であることが理由としてある。しかし、それ以上に老朽化している場合が多い借地権付建物の買い手が現れにくいことも現実である。特に相続財産が借地権建物である場合、相続人が相続することを望まないケースも多くある。特に債権の担保となっている場合、相続人は相続放棄を選択することも多いであろう。

 7月31日開札ではJR常磐線「北千住」駅徒歩約23分に立地する借地権付建物が対象になった。そしてこの物件がまさに所有者が死亡し、相続人が相続放棄した物件であると思われる。建物は木造で44年を経過し、ベランダを始め至る所が老朽化し、破損している状況である。ただ借地は幅員約5.4mの公道に面している整形地で約27坪の広さがあるので、住宅地としては商品価値がある。この物件の売却基準価額は1045万円であったが、これに対し入札は1本のみで、最高価2900万円で競落されていった。そしてその競落者はこの借地権の地主であった。地主としては、この競売で第三者が競落し、新たな借地権者と土地賃貸借契約を結ぶより、この機に是非とも自らの所有権土地にしたかったのであろう。かなりの上乗せ率であったのも地主ならではである。借地権付建物の競売の場合、地主は有力な入札者と言えるだろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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