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東京競売ウォッチ

2018年3月27日

第408回 売却基準価額1万円のマンションが競落3回目

 マンションの売却基準価額は積算価格や収益還元価格から算定した評価額から管理組合に対する滞納管理費等を差し引いて定める。しかし、多額の滞納管理費等があると売却基準価額がマイナスに陥ることもある。こういった場合は便宜的に売却基準価額を1万円に設定される。

 3月13日開札において東京メトロ千代田線「北綾瀬」駅徒歩約11分に立地する築42年が経ている専有面積約8坪の1Kが売却基準価額1万円にて売却に付された。この物件の評価書を見ると、一般正常価格は440万円で、これに競売であることの減価30%を施して308万円が出されていて、ここから滞納管理費等が約200万円、遅延損害金が約150万円、それに弁護士費用約14万円で合計約364万円を控除するとマイナス60万円弱となってしまう。よってこの物件の売却基準価額は1万円とされた。結果としては11本の入札があり、最高価264万円強にて個人が落札していった。

 これで管理組合も滞納管理費等を回収できると安心しているかと思われるが、必ずしもそうではないかもしれない。というのもこの物件は少なくとも昨年5月と10月の2回競落されたものの代金納付がなされず再々度の競売になったのである。売却基準価額1万円では入札保証金は2000円でしかないので、2000円の損失だけで気楽に権利放棄できてしまう。今回もそうならないとは限らないように思う。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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