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東京競売ウォッチ

2013年12月24日

第211回 入札なしの居住用マンション

 12月5日の開札も大いに賑わった。これで今年の開札は19日1回を残すのみとなった。昨今、居住用マンションで落札されない物件はかなり限られるが、そんな中、12月5日、入札がなく特別売却に回ったマンションがあったのに目を引かれた。

 その物件は東京メトロ有楽町線「江戸川橋」駅徒歩約3分に立地し、専有面積約25坪の3DKであった。好立地であり、その割に売却基準価額1,619万円と低いものの、応札がなく不思議に思われた。しかし、この物件、まずは東京オリンピック開催の年に完成した築50年目とかなり古い。そして敷地の権利が賃借権である。

 また借地契約に関しては、1回更新を経て、現在の期限は平成32年2月と、あと6年強の残存期間である。

 ちなみに住宅ローンは、土地権利が賃借権の場合、融資期間について、借地期間の残存期間までとなることが多い。また築年数からも融資期間が制限されよう。鉄筋コンクリート造は法定耐用年数が47年なのである。

 さらに、本借地は地主への名義変更料の支払いが必要でもある。そんな内容であることから、再販業者は二の足を踏んだのではないだろうか。ちなみに借地契約の残存期間の長短は物件の評価書の積算評価額算出にあたって、評価人により斟酌されていない。

 占有者が引渡命令対象であるので、この物件については築年数および借地のダブルネックが、入札なしの結果を招いたと言えるだろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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