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東京競売ウォッチ

2017年5月16日

第368回 久々建売用地に大量入札

 昨今対象物件数が少なくなった競売では、纏まった土地がなかなか出にくい状況にある。建売業者も競売市場からの用地仕入れはかつてのようには期待できない。そんな中4月13日開札では、都営新宿線「篠崎」駅徒歩約9分に立地する、土地付建物(倉庫・事務所)が一戸建分譲会社の注目を集めた。

その土地は北西側で幅員約8mの公道に面する整形地で広さは約260坪ある。建物は鉄骨造の2階建で、延床面積が約290坪である。築年は平成元年築なので、十分使用可能であるが、分譲用地とするならば、評価は解体費用分だけマイナスということになる。

 売却基準価額は1億95万円であったが、これに対し、32本の入札があり、最高価2億6100万円強と上乗せ率が160%近い高水準落札であった。

 この落札価格は1坪約100万円に相当するが、更地化することを考えれば、もう少し高い水準での競落ということになろう。ちなみにこの物件の正面路線価は1坪74万円強であり、競落水準はその35%超上乗せとなっている。

 なお、この土地を建売用地とする場合は、道路負担部分が生ずるので、再販時の消費者分譲価格はマージンを考えれば有効面積1坪あたり150万円近くなるだろう。やや高い感じも受けるが、用地不足の市況から、やはり強気の入札でないと競落できないのだろう。

 それにこの用地は間口20m、奥行42mの整形地で、分割しやすい。そして占有者も6か月明渡猶予対象者であり、明渡しの目処もつくというメリットもある。競争が激しくなるのは仕方がない物件ということであろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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