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東京競売ウォッチ

2025年12月23日

第773回 豪徳寺地主の借地権競売

 旧法借地権物件の地主の中では宗教法人の数が多い。そしてその多くが大きな土地のうちの一部となっていて、底地は売却しないのが通例である。故に永年にわたり借地関係が続くことになる。東京においても大地主であるお寺はいくつかあるが、その中で有数なお寺が世田谷区の豪徳寺である。

 12月3日開札ではこの豪徳寺が地主である借地権付建物が開札対象となった。その物件は東急世田谷線「宮の坂」駅徒歩約6分に南東側で幅員約4mの公道に面して立地する。借地面積は約58坪で400坪を超える大きな一筆地の一部である。建物は築60年を超える木造の古家で、空き家となっている。今般相続によって持ち分を取得した共有者の一人からの共有物分割請求訴訟により競売に付された。地主の豪徳寺は現在法定更新中の現借地契約の譲渡承諾料は借地権の2割相当額とし、更新料も同額水準とのことである。

 また建物は非堅固建物に限られ、3階建以上は不可となっている。さらに共同住宅や、区分所有建物そして地下駐車場も不可となっていて、利用制限がかなり厳しい借地権と言える。そんな条件で売却基準価額は4086万円であったが、これに対し入札は2本に止まったものの、落札価格は9050万円とかなりの上乗せ率での競落であった。

 競落者は地主豪徳寺と今後建替えや区画の分割について協議しなければならないだろう。特に区画の分割については認められるかどうかは微妙ではある。入札前の事前打診を行っていることも考えられるが、いずれにしろかなり高水準価格での競落であった。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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