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東京競売ウォッチ

2022年12月27日

第631回 袋地駐車場に1本入札

 道路に接せず、他人地を通らなければ出入りができない土地は袋地と呼ばれる。袋地の所有者はその土地を囲んでいる他の土地(囲繞地)を通行できる権利が民法上認められている。ただしその通行は通常人の出入りについての権利と考えられていて、自動車の通行はまでは認められない扱いのようだ。

 12月8日開札では都営大江戸線「新江古田」駅徒歩約6分に所在する約6.5坪の実質袋地が競売対象になった。実質と言うのは地図上では道路に接するものの、道路との間には擁壁があり、そこからは出入りできない形状であるからである。さらに対象土地は駐車場として利用され、同じく駐車場である隣接地を経由して接面道路とは別の道路に車両の出入りしている。しかし、その隣接地所有者は車両通行を認めていないとのことである。今般この隣接地所有者が申立て債権者として対象土地を競売に付した。

 売却基準価額は417万円と1坪64万円に相当するが、前述のとおりこの土地は少なくとも自動車の通行権は認められない公算が強いので、利用価値はほとんどないだろう。それでも評価書では通常の接道ある土地の5割減で評価している。これでは入札するものは現れないと思われたが、結果は入札が1本入り最高価1000万円にて競落されていった。おそらくは隣接地関係者の競落と思われるが、袋地で狭小、且つ利用に困難が伴う土地でも通常の5割相当の評価があるのには驚かされた。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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