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東京競売ウォッチ

2010年5月24日

第42回マーケット回復の兆し

 5月14日開札で、高級住宅地の代表格である田園調布の土地の開札結果に目を引かれた。その土地は東急東横線「田園調布」駅西側(ロータリー側)徒歩3分にあり、南側で幅員7.2mに面する約75坪の更地である。

 結果は売却基準価額1億6,296万円に対し、入札20本が入り、最高価2億3,350万円での落札であった。これは1坪あたり310万円強に相当し、路線価(1坪あたり約264万円)の1.17倍にあたる。こういった高グロスの高級住宅地に大量入札があるということは、不動産マーケットが回復している兆しとも思える。

 さて、この土地の登記簿の内容を見てみると08年に現所有者である不動産会社が5億円超の融資を受けて、やはり同じ不動産会社から購入している。当時売主であった不動産会社は保有期間が半年程度で、転売目的で取得したと考えられる。現所有者は不幸にも転売ができなかったということであろう。

 5億円といえば、1坪あたり約670万円であるところから、今回の競落価格は先のミニバブルの水準から約50%の下落と言えよう。ちなみに、現所有不動産会社に購入資金を融資していたのが、先に破産した金融会社SFCGであった。

 結局、同社の債権を取得した(SFCGの債権者たる)信託銀行がこの競売を申立て、債権回収を図ったのである。先のミニバブルの生成と崩壊を端的に表していると言えよう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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