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東京競売ウォッチ

2016年3月8日

第313回 ワンルームの競落水準に天井感

 不動産投資の中でも1番手頃で、サラリーマンが入門の対象として多く取引されているのが、ワンルームマンションである。

 バブル経済崩壊直後は競売市場に多くのワンルームマンションが出てきた。表面年利回り10%超の物件も多く、当時は実際競落もできた。しかし、近時は都心の築浅ワンルームを中心に、低い利回りでの取引が市場でなされている。競売市場でも当然競落水準は上昇している。

 2月9日開札で、東京メトロ丸ノ内線「淡路町」駅徒歩約2分に立地するワンルームマンションに25本の入札が集まった。その物件は築約11年で、専有面積は約7坪である。現在賃料等を月額9.6万円収受している。年間115万円強の収入であるが、ここから管理費や修繕積立金、そして固定資産税等を差し引くと、実質100万円強が手取りとなる。

 一方、このマンションの売却基準価額は984万円であるので、この価格で競落されれば、年利10%程度の利回りが得られる。しかし、競落されたのは、2044.2万円であった。登録免許税、不動産取得税そして滞納管理費を加えた購入取得総費用は2110万円強になろう。ということで、競落価格から考えると、実質年利4.7%程度ということになる。競落したのは再販業者であるから、おそらく再販価格は2,500万円以上となろう。

 そして、それを購入するエンドの投資家は登記費用や不動産取得税を考慮すれば2,600万円近くを要するので、年利実質4%未満になると思われる。年4%未満となれば、建物の老朽化などを考えると、売買価格や賃料の値上がりがないと、長期的に投資としては採算がとれない可能性が大きいように思う。競売ワンルームもかなり価格に天井感が出ている。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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