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東京競売ウォッチ

2011年1月17日

第74回競売市場の分析(下)

 前回に続き、10年東京地裁競売市場の分析を行いたい。まず、競落価格の水準を示す売却基準価額に対する競落価格の上乗せ率であるが、先週紹介した売却率の上昇に呼応するように、昨年より増加している(表1参照)。全体として3ポイント強の上昇であるが、2009年については土地及び土地付建物についてアトリウム社などの高額の自己競落物件があったため、大きな数字に表示されており、それを考えると、実際はかなり大きく上乗せ率が上昇したものと思われる。

 とくに、再販業者の競落が主であるマンションについては、20ポイント以上の上昇となっており、その再販による利益率はかなり圧縮されているものと考えられる。ただ、高水準の競落価格設定は5月から7月あたりがピークであったと思われる。

 競落水準の高低を判断する指標として、筆者は落札1物件当たりの入札本数を見ているが、2010年はマンションに関して5月の17.2本が最高で、12月になると10.71本にまで低下している。

 表2は2009年、2010年の上・下半期で、全体についての落札1物件当たりの入札本数を表示しているが、全体的にも2010年下半期はやや沈静化してきている。強気の仕入れに一服感が出てきているようだ。

 一方、投資用ワンルームについては個人投資家の落札も目立った。8月には千代田線「根津駅」徒歩6分に立地する専有面積約7坪の物件に41本もの入札が集まり、売却基準価額447万円に対し、900万円で個人が落札した。実質年利回り8%ほどの水準である。低グロスで現金投資が可能なワンルームは、多くが個人落札になってきている。



山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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