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東京競売ウォッチ

2018年10月16日

第434回 4000万円超の入札保証金放棄か?

 このところ不動産融資については金融機関が引き締めてきているというのは巷間よく耳にする。競売物件に対してもおそらく競落代金を金融機関から引っ張ろうとした場合、物件の評価額が低いなどで、思惑通りの資金手当てができないことも生じているように思う。

 9月20日開札で東京メトロ銀座線「田原町」駅至近に立地するビルが開札対象となった。その物件の土地は東側で幅員33mの都道に面する約71.5坪である。ただしそのうち約29坪が近隣の寺が地主の借地である。そして建物は築13年強の鉄骨9階建で、延床面積は500坪強(一部所有者が使用するほか第三者占有)であった。そしてこのビルの売却基準価額は2億2080万円で、これに対し10本の入札があり、最高価7億9830万円にて競落された。

 さてこの物件今年の1月23日に1回競落されているのである。その時の入札は16本集まり、最高価10億3600万円で競落されている。競落者は不動産会社系と思われるが、今般また同じ売却基準価額で再入札になっている。これが意味するのは、ほぼ先の競落者が代金納付できなかった、つまり購入資金を調達できなかったということではないだろうか。

 とすればその先の競落者は入札保証金(4416万円)を放棄したことになる。本物件の敷地が一部借地であったこともあろうが、金融機関の融資基準が厳しくなり、目論んでいた資金調達ができなかったからではないだろうか。入札者は金融機関の融資を前提とした応札にあたっては慎重な姿勢が求められる状況になってきた。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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