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東京競売ウォッチ

2016年10月25日

第344回 応札少ない1階のワンルーム

 ワンルームマンション市場はマイナス金利時代を背景にサラリーマンへの投資対象として活況が続いている。競売市場でも強気の入札が散見されてきたが、その中にあってあまり入札が集まらないものもある。

 もちろん立地条件や、トイレ、バスが別であるなどの設備条件による人気度の違いがある。しかし、それよりも大きく入札本数に影響があるのは、対象住戸が存する階数で、特に1階の住戸には応札が少ない傾向がある。

 9月27日開札では、京浜急行線「鮫洲」駅徒歩約4分に立地するワンルームマンションが対象になった。この物件はその1階に存する住戸である。築9年と比較的新しく、また月額80,500円の賃借人が付いている。管理費・修繕積立金は月額8,800円、固定資産税・都市計画税は年額4万円強である。したがって手取り年収は約82万円で、この物件の売却基準価額923万円に対しては年利約8.9%の水準になる。

 これに対し入札はわずか2本で、最高価1,151万円にて競落されていった。年7%程度確保できる水準での競落であり、このところの競落水準から推すと、低い水準にあるように思う。しかし、結果は少ない入札に終わった。これはやはり、先に述べたように1階に存するということに大きな原因があると思われる。

 この部屋には専用庭が付いており、魅力的に思える条件もあるが、一般的に1階の住戸に関しては、購入にあたってのファイナンスが付きにくいということがあるのである。これは1階住戸がプライシーや防犯に関して劣るということで資産価値が低く、換金もしにくいと金融機関が判断するからである。

 ワンルームマンションはある意味金融商品であるので、ファイナンス条件に価格が影響されやすいのである。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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