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東京競売ウォッチ

2017年12月19日

第397回 旧耐震荒廃部屋に応札無し

 このところ東京地裁本庁では100%落札が常態化しているが、12月7日開札では珍しく応札が無いマンションがあった。

 そのマンションは都営三田線「本蓮沼」駅徒歩約1分に立地し、築38年である。対象となる部屋は6階部分の1DK、専有面積約12坪で、売却基準価額が1439万円、買受可能価額は1151.2万円であった。築古とは言え、駅至近の物件に入札ゼロは却って目を引いた。

 3点セットを見るとまず気が付いたのは評価書における収益価格である。年間純収益約67万円に対し、年3.5%で割り戻した1820万円を導いているが、どうもこれが高すぎる感がある。結果として積算価格(1607万円)は出ていたものの、正常価格として1820万円を採用。競売減価などを施し、先の売却基準価額が設定された。滞納管理費等も100万円超あり、結果としてこの価額に割安感が無かったのだろう。それに加えこの部屋は所有者占有であったが、現況調査報告書によれば、占有者は電気、ガス、水道が止められた状態で居住しているとあり、明渡には相当梃子摺りそうな感もある。実際公開されている室内写真でもゴミが散乱している様が見られる。特別売却で入札があるのか、興味が持たれる。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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