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東京競売ウォッチ

2020年10月20日

第523回 オーナーチェンジマンション割安で競落 !!

 コロナ禍において戸建て分譲会社が業績好調であるとの報道が目につく。これはステイホームにより住宅購入検討をする時間が増加し、この機会にマイホーム購入をする勤労者が増加したことが背景にあると言う。中古マンションも成約件数が順調に伸びている。一方でホテル事業にシフトした不動産会社などは在庫処分に苦慮しているようで、同じ不動産会社でも業績の違いが大きくなっているように思う。競売市場でも、本欄で紹介したように実需向けの再販住宅への入札は好調である。そこで実需向けでない賃貸用物件はどうであろうか。この状況を見る競落事例として9月16日開札の最先の賃借権がある、つまり購入後賃貸し続ける前提のマンションを紹介する。

 その物件はJR総武線「錦糸町」駅徒歩約8分に所在する専有面積約15.5坪の2LDKの部屋である。築8年と比較的新しく売却基準価額は2504万円であった。この立地そして築年などを考慮すると、この物件では専有面積坪単価約300万円程度は十分見込まれ、約4600万円前後が相場かと思われるが、実際の競落価格は3285万円であった。滞納管理費等も10万円超くらいであるので、かなり安い感じがする。ちなみに賃料は月額14万円強で、管理費等や固定資産税等を差し引いた実質年収は約140万円である。競落価格で計算すると年約4%の利回り水準の競落であり、利回りとしては確かに魅力的とは言えないかもしれない。明渡可能であれば4000万円近くの競落もあったであろうが、実際は上記の価格で競落され、入札も7本に止まった。賃借権付マンションと実需再販用のマンションでは人気の差が大きい現状を表す競落事例と言えよう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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