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東京競売ウォッチ

2015年4月7日

第272回 管理費滞納17年半で720万円

 競売マンションで付き物なのが滞納管理費である。競売においては「建物の区分所有等に関する法律」(いわゆる「区分所有法」)によって競売における買受人が、その滞納額を承継し、負担することになる。

 そして競売に付されたマンションは、その買受人が負担することになる滞納額については、その分を控除し売却基準価額が決定されている。マンションによっては滞納額が過大となって、極端に低い売却基準価額が設定されることがある。

 3月12日開札では、売却基準価額が1万円のマンションが出現した。その物件はJR東北本線「尾久」駅徒歩約7分に立地する築約27年のマンションの1室である。専有面積は約12坪の事務所タイプであった。

 問題の滞納管理費は平成9年8月からの分で、およそ17年半の滞納期間である。合計金額は約720万円に及んでいる。そして事件記録によれば、部屋には動産類が一切存在しない空室状態で、所有者が占有している状況である。

 この物件評価書においては、まず競売減価を施す手前の正常価格は751万円と評価されており、これに競売減価(30%)を施し、525万円強が計算されており、ここから滞納管理費を差し引くと、売却基準価額がマイナスの値となってしまう。これでは仕方がないので、売却基準価額を1万円として売却に付すことになった。

 結果は17本の入札が集まり、最高価457万円にて業者が落札していった。滞納管理費を考慮すれば1,200万円近くの投資額になるのだが、それで採算が合うとの判断なのであろうか。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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