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東京競売ウォッチ

2021年3月2日

第542回 所有権係争中マンションが一番人気!!

 このところの中古マンションの相場上昇は著しく、マンション売買・仲介業者は物件不足に悩んでいる。そんな中2月17日開札の一番人気物件は、占有者が所有権を主張し訴訟を提起しているマンションであった。そのマンションは東京メトロ銀座線「田原町」駅徒歩約2分に立地する。専有面積約13坪の2DKで、平成23年9月に竣工した比較的新しいマンションである。このマンションの売却基準価額は2003万円であったが、これに対し30本の入札があり、最高価4480万円にて再販業者と思われる会社が競落した。

 売却基準価額の約2.2倍に上り、専有面積坪単価は優に300万円を超える。問題は占有者が現所有者に騙され所有権を移転されたとして所有権移転登記などの抹消登記手続請求事件が係属中であることである。現占有者が係属中事件に勝訴せず買受人が代金納付を行えば占有者の占有権限は買受人に対抗できない。任意の明渡交渉が纏まらなければ、引渡命令を買受人は申立て、裁判所は発令すると思われる。しかし先の係属事件の決着がついていなければ、占有者は引渡命令に対する執行抗告を行う可能性があり、抗告が認められずとも明渡には時間を要する可能性はある。このようなことから評価書では20%の係争減価を行っている。それにも拘わらず大量入札かつ高水準の競落結果に驚かされた。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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