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東京競売ウォッチ

2012年10月16日

第155回 マンションの滞納管理費

 競売のマンションにおいて、買受人が承継する債務に滞納管理費がある。周知のとおり、これは区分所有法(8条、9条)の定めにその根拠がある。

 裁判所としては、売却基準価額について、買受人が承継すべき滞納管理費債務を控除した上、設定している。

 しかし、マンションによっては、滞納管理費の額が大きいため、控除しきれず、結果、売却基準価額が計算上マイナスになってしまうケースがある。

 9月11日開札では、丸ノ内線「新高円寺」駅徒歩約3分に立地するワンルームマンションが対象になったが、このマンションが正に、そういった物件であった。

 滞納した期間はおそらく13年程度はあり、235万円を超える額に上る。さらに延滞に対する遅延損害金が、370万円を超えている。

 高額な滞納管理費等のため、この物件の売却基準価額は計算上マイナスとなってしまったが、結局、売却基準価額は最少額とも言える1万円に設定された。結果は8本の入札が集まり、最高価278万円弱で、個人が競落していった。

 さて、この滞納管理費であるが、この債務は短期消滅時効(5年)に掛かる。したがって、5年を超えた部分において、時効が中断される支払督促や、債務承認取り付けなどを管理組合などが行っていなければ、買受人が時効援用できる余地はある。よって買受人は管理組合への滞納経緯などしっかり照会すべきであろう。

 ところで、このマンションは敷地利用権が地上権であり、よって所有者は相当期間地代も滞納していた模様である。しかし、この分については、買受人の承継義務はない。これについては、地主もしくは管理組合が旧所有者に請求し続けなくてはならないだろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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