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東京競売ウォッチ

2016年10月11日

第342回 築16年の代官山アドレス

 このところ都心の高級マンションの売れ行きが鈍化してきている。郊外の一次取得者用マンションはすでに契約率が落ちていたが、都心にも波及してきた。

 郊外型マンションの契約率低下は、勤労者の所得が伸びないところで販売価格が上昇したことに起因している。しかし、都心高級マンションについては、超低金利を背景にした投資需要が旺盛であったため、新築、中古ともよく売れていた。しかし、ここへきて契約率が低下しているのは、そういった投資マネーの勢いが減じたからであろう。

 9月8日開札では、東急東横線「代官山」約2分に立地する「代官山アドレス」(築約16年)の22階の部屋が対象になった。専有面積は約25坪の2LDKであり、売却基準価額が1億185万円であった。

 これに対し、入札は16本で競落価格は1億2,888万円であった。再販業者が落札しているが、売却基準価額に対する上乗せ率が約26.5%と、本年年初あたりの水準からすると低い感じである。いわゆるブランドマンションであり、しかも対象の部屋は空室状態の所有者占有である。ということは、競落後の再販は遅滞なく行うことができ、強気の入札があっても良い感じがする。しかも、本件には滞納管理費等もないようなので、購入付帯コストも大きくない。

 代官山アドレスは総戸数が500戸を超える大型マンションであり、販売中物件も数件見られ、その値付けは専有面積坪単価700万円を超えるものが多い。となれば先の物件は1億8,000万円程度も見込めそうであるが、その割に競落価格が伸びなかった。入札本数も少ない感じがする。おそらくは、現在売り出し中の物件の売却状況が芳しくないのであろう。東京都心マンション価格高騰の流れは転換したのではないだろうか。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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