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東京競売ウォッチ

2013年10月15日

第201回 北赤羽のアパートに入札29本

 収益物件の人気は、一般不動産市場では依然高い状態にあるが、競売市場でも同様である。9月19日開札でも、大量29本もの入札を集めた木造アパートがあった。

 そのアパートは、JR埼京線「北赤羽」駅徒歩約8分に立地し、幅員3m未満の2項道路面に建っており、築後22年が経過している。土地は30坪強で、建物はワンルームの部屋が12戸からなり、月約65万円、年間で780万円が見込まれる。

 この条件で売却基準価額は1,684万円であったが、最高価はその2.6倍弱の4,323万円であった。競落したのは、不動産会社であると思われ、競落後は再販売される可能性が高い。

 ところで、競落した価格から収益利回りを計算すると、年表面利回りが18%になる。売却基準価額を大幅に超えた競落価格でも、ここまで高い。仮に再販価格を表面利回り13%に設定しても6,000万円の売上げが期待できる。かなり有利な競落であると想像されるが、ここで注意をしなければいけないことがある。

 それは、物件の合法性である。この物件の評価書によれば、本物件につき、建蔽率、容積率、高さにつき建築基準法上、違法が疑われている。

 収益物件の投資家は、多くは銀行等の融資を利用して購入する。非合法物件に対して銀行等は、担保評価を低く見ざるを得ない。特に当該物件は接道条件が悪く、実際に合法的に再築すると、現在より、かなり小さな建物しか建築できない。

 また構造が木造で、耐用年数がほぼ経過していることも融資に影響するだろう。再販は高利回りを前面に出して、現金購入できる投資家に売却することも考えねばならないだろう。

 以上のことを考えると、再販目的であるとすれば、あながち低い競落水準とは言えないのかもしれない。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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