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東京競売ウォッチ

2015年10月13日

第295回 八丈島の山林1,430坪

 東京地裁では売却率100%は珍しくない状況であるが、9月10日開札では1物件だけ応札がなく、特別売却に回った。その物件はと言うと、八丈島の土地である。その土地は八丈島空港から約5.5km離れた山林で、延面積は約1,430坪である。

 実はこの土地は今年の4月9日に売却基準価額170万円(買受可能価額136万円)で開札があったが、応札がなく、特別売却でも売却されなかった。

 今回はその不落札を受け、売却基準価額97万円(買受可能価額77.6万円)にて売却に付されたが、やはり応札がなかった。買受可能価額で考えれば、1坪540円強でも売れなかったということである。

 この土地、1回目の開札の時の評価書では、公示価格から算出した評価額は1坪あたり約3,000円で、そこから競売減価などを施し、170万円としている。

 そして今回、評価額の見直しにあたっては、公示価格ではなく、過去の八丈島の土地(山林)の競落事例を引用している。これは評価書では珍しいことである。その競落事例は約4年前で、1坪あたり620円強であった。今回の買受可能価額はその競落水準を下回ったものの、やはり応札はなかった。

 八丈島と言えばバブル経済のときは、リゾート開発が盛んで巨大ホテルも建設された。しかし、バブル崩壊後は閉鎖され、廃墟と化したものも散見され、今や当時の面影はない。東京の不動産は価格上昇の状況であるが、八丈島は取り残され、むしろ価格は低下しているようだ。不動産市況回復も一様ではない。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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