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東京競売ウォッチ

2018年10月9日

第433回 売却基準価額を下回る落札に3本!!

 このところ東京23区内マンションの落札で売却基準価額を下回る落札はほとんど見かけない。しかし、9月20日開札では練馬区のマンションが売却基準価額を下回り落札され、しかも入札は3本あった。その物件は西武池袋線「石神井公園」駅徒歩約19分に立地する専有面積約18坪の2LDKで、築36年を経過し、おそらくは旧耐震基準下の建物と思われる。

 さてこの物件の評価書であるが、市場価格を積算手法でまずは算出しているが、それによれば土地の共有持分の価格が1600万円超とし、建物の評価額をこれに加え、2500万円弱としている。もう一つ収益還元価格も算出しているが、これはかなり差があり、1000万円強であった。そして最終的には先の積算価格2500万円弱を採用し、そこから売却基準価額1895万円を設定している。

 ところがこのマンション同棟内でほぼ同じ床面積の部屋が今年の3月31日に1720万円にて成約している。これは不動産流通機構レインズに登録されている。本件対象物件の裁判所の評価人はこの取引事例をも踏まえた売却基準価額であるとはちょっと思えない。マンションの場合取引事例を尊重した査定が常識であるが、どうも東京地裁ではそうなっていない。同じ競売マンションの評価でも千葉地方裁判所などでは取引事例を尊重するところもある。積算評価重視であると、このように取引相場より高い数字が算定される場合もあるが、その逆もまたある。東京地裁も修正の必要があるように思える。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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