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東京競売ウォッチ

2016年10月4日

第341回 京成立石の借地権付建物

 競売には借地権付建物の出現率が高いのはよく紹介している。これは地主の譲渡承諾の必要があるため、なかなか任意売却が進まないことにある。それ以外にも土地賃貸借契約の不備などの問題なども原因にある。

 9月8日開札では京成押上線「京成立石」駅徒歩約6分に立地する借地権付建物が対象になった。敷地面積は約16.5坪で建物は築6年の木造2階建てである。床面積約18坪あり、間取りは3LDKである。土地賃貸借契約期間は現建物が建設されたときに更新され、残存期間は約16年である。

 この物件の売却基準価額は422万円で、これに対し入札17本が入り、最高価1,156万円弱にて個人に競落されていった。借地権付建物としては多くの入札があったのは、建物が新しかったからであろう。

 しかし、本件には2つの問題がある。1つは建物敷地が借地契約のない隣地にまたがって建てられていることである。もう1つは隣接地がドライクリーニング店であり、土壌汚染の可能性を否定できないことである。この2つの問題により、売却基準価額は減額されている。そして、これらの問題は再販を考える不動産会社としては、大きな入札への障害になる。個人落札であったことは、こういった原因も考えられよう。

 さて、競落者は地主(個人)に対し名義変更料(評価書では105万円の計算)の支払いを要するが、このほか、またがり土地に対する借地権設定費用がかかることも考えられる。

 ただ、そうであっても個人が実需で取得したのであれば、所有権では同規模の中古戸建ては2,500万円程度と考えられるから、地代(月額14,025円)を考慮しても割安と言えるかもしれない。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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