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2024年06月25日

第702回 実勢相場を反映しているマンションの新相続税評価

 今年からマンションの相続税評価額計算のルールが大きく変わった。これにより築年が浅い都心のタワーマンション購入による相続税節税効果が減ぜられた。新しいマンションの相続税評価額計算において用いられるのが従来の計算方法での評価額との「乖離率」である。この乖離率は階数、総戸数が大きい築浅タワーマンションがより高くなり、およそ3~4が算定される。仮に乖離率が4であれば相続税評価額は従来計算値の約2.4倍にまでになる。

 6月12日開札ではJR山手線「恵比寿」駅徒歩約14分に立地する築24年、専有面積約19.8坪の2LDKの部屋が対象になった。このマンションの売却基準価額は5549万円であったが、これに対し、この日最高の28本の入札が集まり、最高価8570万円弱で競落されていった。競落価格の専有面積坪単価は約435万円であり、近隣のマンションで専有面積坪単価1000万円超の取引事例がある中で、さほど高い水準に思えない。しかし、確かにレインズで同じマンションに同じような坪単価の成約事例も見受けられる。ちなみにこの競落マンションの相続税評価乖離率は約2.25と計算され、さほど大きな乖離率ではなく、従来計算値の約35%上乗せと見られる。これは対象マンションの総戸数が30戸と小さいことや9階建てと低めなことなどが影響している。専有面積坪単価1000万円超のマンションは逆に3を超える大きな乖離率のマンションであろう。この「乖離率」はうまく市場の相場形成を反映しているように感じる。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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