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東京競売ウォッチ

2014年11月4日

第253回 分譲主所有のマンション駐車場

 マンション分譲にあたっては、棟内の駐車場部分はマンションの区分所有者の共用部分にするのが、現在一般的である。しかし古いマンションの中には、棟内の駐車場部分を分譲主の所有としたままのものがある。分譲主は竣工後、住戸区分所有者などに賃貸し、収益を上げるのである。

 その分譲主であった不動産会社が破綻し、駐車場部分が競売になった例が先の10月9日開札にあった。

 その物件は、東京メトロ銀座線「表参道」駅徒歩約4分に立地し、築39年を経過するマンションの地下1階部分の専有面積約54坪の駐車場である。駐車場の専有部分は8台の駐車区画に区切られ、利用されている。

 ただし、分譲主は当該マンション開発にあたって、全8区画のうちの3区画について、分譲当時の地権者と思われる個人に対し、所有権を交換契約で移転していたようだ。

 しかし、登記上は全体が1区分建物として分譲主の登記名義となっていて、それが今回差押、競売となったのである。その個人が所有権を主張する3区画分は登記されておらず、裁判所としては、その部分についても競売対象として扱っている。

 競落後は競落人へ所有権移転されることになるが、移転後、当該3区画所有者との間で当該部分についての所有権確認の訴えがなされる余地はありそうだ。

 そんな中、当該物件は売却基準価額821万円で、これに滞納管理費等が1,500万円超あったが、結果、入札が5本集まり、最高価2,000万円にて競落されていった。

 本駐車場の収益は8台分あるとすれば、月額約30万円、年360万円程度見込める。管理費等及び固定資産税等の費用を考慮すると、実質収入は300万円強となる。競落人の取得コストが3,600万円強とすれば、実質利回り年6%以下となりそうだ。

 先の一部所有権争いの可能性を考えると、決して安くはない競落価格と思える。しかし、好立地の収益物件に対する品薄感から、このような競落もあり得る市況なのかもしれない。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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