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2023年02月14日

第637回 借地権付マンション高上乗せ競落

 借地権付建物の中にはマンションも数は少ないが存する。1月18日開札では都営三田線「新板橋」駅徒歩約7分に立地する敷地が所有権と借地権の混合のマンションが対象になった。敷地は約85坪であるが、その過半約55坪が借地である。地主は個人で、マンションの管理組合が借主となっている。借地期間は30年、期限は2039年で、建物は築49年近く、かなり古い。対象の部屋は約13坪の2DKで、売却基準価額は574万円であった。これに対し入札が13本あり、売却基準価額の2.14倍にあたる最高価1234万円弱で再販業者が落札していった。過去の成約事例を見ると専有面積坪単価100万円以下での取引であるので、単純に考えれば競落価格が市場価格に近い。おそらくリノベーションによる付加価値をつけ再販利益を狙うのだろう。築古であっても、敷地権利が借地権であっても利便性の高い立地で総額が低いファミリーマンションにはニーズがあるのだろう。

 ところでこのマンションの借地権部分の敷地所有者(地主)は個人である。築50年近いマンションであれば今後建替えの話も生じるであろう。マンションは建替えについてただでさえ区分所有者の合意形成が難しいが、そこに地主の建替え承諾も絡むと難易度は増しそうだ。将来相続が発生した場合に敷地が共有になることも考えられ、承諾取得はさらに難しくなりそうだ。こういったことが借地権付マンションがディスカウントされる要因とも言えよう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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