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東京競売ウォッチ

2012年6月19日

第140回 低いマンションの上乗せ率

 今年に入っての東京地裁競売市場の入札傾向で気づくことの一つに、マンションについての競落価格の売却基準価額に対する上乗せ率が、昨年より低くなっているということがある。

 昨年通年では、マンションに関しては、この上乗せ率は約47%であったが、今年に入り、これまで40%前後で推移している。

 これは、今年に入って、中古マンションが、その取引件数は堅調に推移しているものの、流通価格が概ね下げ基調であることを反映した結果ではないだろうか。

 5月29日開札対象のマンションの中に、築4年未満の新しいファミリーマンションにもかかわらず、入札がわずか1本しかなかったものがあった。しかも、落札価額は売却基準価額を下回り、買受可能価額に近い水準である。

 その物件は足立区内の日暮里・舎人ライナー「舎人」駅徒歩約28分に立地する専有面積約22坪の3LDKの部屋である。所有者居住であり、明渡しは比較的問題はない。売却基準価額は1,509万円であったが、これに対し応札は再販業者の1本のみで、競落価格は1,253万円弱であった。おそらく競落会社は、再販価格を専有面積1坪あたり80~90万円程度と考えたのではないだろうか。

 足立区の中古マンション相場も今年に入り軟調である。さらにこの物件は、周辺に工場が多いことや、交通の便が悪いこともあって、築年が新しいとは言え、再販価格を控え目に見ざるを得なかったのだろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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