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東京競売ウォッチ

2023年12月12日

第678回 マンション入札がやや沈静化?

 11月22日開札では東京メトロ丸ノ内線「新中野」駅徒歩約4分に立地する1Rマンションが対象になった。専有面積約6坪で築36年の物件であるが、このマンションの所有者はこの部屋で孤独死している。部屋の中はゴミが溢れ、ベッドには虫が這う惨状となっている。死後相当日数が経過していて、部屋全体に悪臭が漂う状況である。当然競落人は当該部屋の特殊清掃クリーニングには相当のコストを掛けねばならないだろう。

 この物件の売却基準価額は480万円であったが、これに対し11本の入札があり、最高価703万円で競落されていった。

 さて本物件は今から約11年前に亡くなった旧所有者が現金購入したもので、最初からかもしくは途中からかは不明だが、自ら使用し、6年近く前から管理費等の滞納が始まっている。累計でその額は144万円弱である。昨年このマンションの管理組合が滞納管理費の先取特権に基づき競売を申し立てた。このマンションには抵当権等は無く、他の債権者は固定資産税等滞納と思われる中野区だけのようである。このような競売は債権者である管理組合は申立ての滞納管理費等について、競落者の競落代金から配当として受けられる。従って競落者が競落後管理組合に滞納管理費等のおおよそは負担しなくて良いだろう。

 ただ弁護士費用約22万円などは競落者が負担することが見込まれる。それに加え先に記した特殊クリーニングの費用、残置物の処分費用が競落者負担である。そういった費用及び孤独死によるリーシングへの障害を考慮しても割安と捉えられ二桁入札になったようだ。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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