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東京競売ウォッチ

2014年5月27日

第231回 価格の変動要因である接道条件

 東京地裁の競落活況はマンション主導であるが、好立地戸建てにも多くの入札が入るようになってきている。4月24日開札で42本もの大量入札があったのが、都電荒川線「巣鴨新田」駅徒歩約8分に立地する戸建てである。

 土地は南西側で幅員約4.5mの公道および南東側で幅員約2mの私道(42条2項該当)に面する約40坪。建物は木造築35年の2階建て、延床面積は約47坪である。

 この物件の売却基準価額は2,395万円であったが、競落価格はその2.5倍を超える6,121万円であった。さて、この物件、建物の築年から推して、競落者は解体したうえ、更地での売却または再築を計画するものと考えられる。この場合、接道する道路が公道であるか否かが大きく影響する。

 私道であると、対象土地上に建物を建築する場合、通常接面する私道の共有持分者に対して、工事車両の通行や、水道管等の埋設のための掘削工事承諾を要することになる。そして、この承諾が取れることは、100%ではない。先の物件は私道に面するものの、建築基準法上の接道義務や、上下水道の引込などを公道にて果たす、もしくは行うことができるので問題はない。逆に好立地であっても、接道条件が悪い土地は売却基準価額への上乗せは大きく低下する。

 先の物件と同日に落札された中野区の戸建ては売却基準価額3,106万円に対し、入札は5本に止まり、落札価格も3,333万円と、わずかな上乗せであった。この物件は土地が路地状であり、路地状部分の幅が1mに満たないのである。

 建築基準法上、再築不可ということであり、評価書において55%の減額がなされている。それにも拘わらず、先のとおりわずかな上乗せ率である。土地にとって接道条件は大変大きな価格の変動要因であるのがわかる。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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