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東京競売ウォッチ

2011年5月9日

第89回シェアハウスへの転用

 このところ不動産運用方法として、シェアハウスの話題を結構耳にする。若年層の所得低下などから、低廉住宅を求める動きがあるのと、それに加えて共同生活と、それに伴うコミュニケーションを彼らが求めていることが、シェアハウス人気をもたらしているようだ。

 競売物件においても、こういった共同生活用の住宅転用対象として、入札されているのではないか、と思う例がある。シェアハウスに向くのは、建物が古くても部屋数が多く取れ、さらにその割に取得価格が低い物件と言われる。運営管理の手間が大いにかかることや、賃貸収益が変化することが予想されることから、投下資本に対する効率が高い水準で求められるのだろう。

 4月14日開札では、都営三田線「西巣鴨」駅徒歩約5分に立地する病院が競落された。この病院は敷地が166坪強あり、そこに築47年の鉄筋コンクリート造4階建て、延床面積約330坪の建物が建っている。

 この物件の売却基準価額は8,836万円であったが、これに対し、入札が17本集まり、最高価1億7,130万円強にて落札されていった。

 この物件の落札者がシェアハウス、もしくはそれに準ずる施設を計画して取得したのかは分からない。しかし、病院であることは、寮のような共同生活施設には大変好都合ではある。これは居宅転用する場合に、採光を取れねばならないが、病院はこの点、窓が多く好都合であり、食堂などの設備も利用できる。

 さらにこの日、荒川区に立地する作業所・事務所・居宅の土地付建物が11本の入札を集めた。この建物も築38年と古いが、延床面積で175坪を超えている。

 売却基準価額は3,802万円であったので、延床面積1坪あたり約22万円になる。こういった物件もシェアハウスなどへの転用に向くかもしれない。

 ちなみに、この物件の落札価格は6,066万円強であった。それでも割安感はあるように思う。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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