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東京競売ウォッチ

2012年5月22日

第136回 西尾久の借地権付建物

 借地権付建物については、買受人が競落後、買受人が地主と土地賃貸借契約を締結することになることは、従前も紹介してきた。その中に、競売に付された段階で、すでに地主が借地人に対し、地代不払いなどによって賃貸借契約の解除の意思を示している場合がある。

 4月26日開札では、荒川区西尾久の工場兼事務所兼居宅の借地権付建物が開札対象になった。この物件は、地主から賃貸借契約の解除の意思がなされている。借地は、約33坪あり、幅員約6.3mの公道に面している。建物は築40年を超えた鉄骨造で、延床面積約55坪である。

 さて、この物件の売却基準価額であるが、これがわずか1万円なのである。これほど売却基準価額が低いのは、一つにこの物件の地主が借地人に対し、賃借権の解約通知を行っていることから、その係争減価(法的な争いなどがある場合の減価)があることがある。しかし、その分としては、約20%の減価だけである。

 減価が大きいのは、土壌汚染である。この物件は現在稼動していないが、かつては製缶加工工場であり、その関係から、鉛やその他の有害化合物が、土壌に含まれているとのことである。そして、その土壌改良費用が1,600万円を超えるとの見積りであるため、結果として、マイナス評価に陥ってしまうことになった。よって、最低金額の1万円が売却基準価額になった。

 競落結果は15本もの入札があり、最高価756万円にて個人の競落であった。入札保証金が2,000円ということで、とりあえず入札参加した方も多かったように思う。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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