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東京競売ウォッチ

2016年11月8日

第346回 銀座8丁目のワンルーム

 土地価格の日本の最高値として想起されるのは、やはり銀座である。銀座の地名の付く不動産を所有したいという願いを持つ個人投資家も多い。10月13日開札では、銀座8丁目に立地するワンルームマンションが売却基準価額の2.5倍の値で個人に落札されていった。

 その物件は山手線「新橋」駅徒歩約6分に立地する専有面積約5.5坪の部屋で、トイレ・バス一体型のユニットバスが設備されている。

 築年は1981年で、旧耐震基準にて建設されたマンションである。この部屋は不動産会社が借り上げ、某会社に社宅として転貸し、同社社員が居住している。

 いわゆるサブリース形式であるが、現賃借人である不動産会社の賃借権は抵当権設定後のものであり、競落人に対抗はできない。ただし競落人の代金納付後6カ月間、現賃借人は明渡しの猶予を受けられる。現賃借人の賃料は月額65,700円で、転借人の賃料等は78,880円となっている。

 この物件の売却基準価額は744万円で、これに対し入札13本があり、最高価1,878万円にて落札された。競落人がこのままサブリースを続けるならば、管理費等を控除すると年3%ほどの利回りである。ただ競落人は代金納付後6カ月経過後に、現転借人との直接賃貸借契約の途も考えられ、そうなった場合には、現在の賃料から推して年4%程度まで年利回りが向上することにはなる。なお、競落人は転借人に対して明渡しを請求することも可能ではある。

 いずれにしろ旧耐震基準のマンションで、かつ3点ユニットのワンルームマンションがこのような高い上乗せ率で競落されるのは、まさに「銀座」の立地だからであろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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