リアナビ

スペシャリストの眼

東京競売ウォッチ

2016年8月2日

第333回 ワンルームの一般流通価格

 ワンルームマンションは個人投資家の定番不動産である。低金利時代を背景に、販売好調のようである。果たして現状のワンルームの流通価格、また競売の落札水準はどのくらいだろうか。

 7月7日開札でJR京浜東北線「王子」駅徒歩約12分に立地する専有面積約6.6坪のワンルームマンションが対象であった。築約8.5年と比較的新しいこの物件は、月額76,100円にて、社宅として貸し出されている。管理費および修繕積立金が月額合計7,600円、固定資産税・都市計画税合計が年約49,000円であるので、実質年収は770,000円強になる。

 売却基準価額は832万円であり、滞納管理費等がないので、年利回り約9%の水準での競売評価額である。これに対し入札は11本で、最高価1,519万円にて業者に競落されていった。この競落価格を分母とすれば、年利回りは約5%になる。

 ところで、レインズで現在売却中の類似物件を探してみると、同じ棟内に複数の売却物件があった。それらは販売価格の専有面積坪単価が290万円前後である。先の競落物件に当てはめれば1,910万円強となる。この価格で仮に再販されれば、年実質利回り約4%ということになる。

 ワンルームマンションは価格における建物の比率が高い。その建物の劣化は投資の上で考慮すべきで、それはおおよそ年1%以上と考えねばなるまい。実質年4%の投資であれば、利回りは3%以下になる。これに空室リスクを考えるとさらに期待利回りは低くなる。加えて賃貸住宅市場はここ数年供給過多傾向にあり、建物の老朽化かから賃料の低下のおそれもありそうだ。それでも築浅好立地ワンルームは年4%を一般流通価格と見込み、応札がなされているようだ。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


BackNumber

コラム一覧

山田純男 東京競売ウォッチ

2024年05月14日



Copyright (c) 2009 MERCURY Inc.All rights reserved.