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東京競売ウォッチ

2023年02月28日

第639回 新築時に劣らぬ競落価格

 マンションは新築分譲時にはいわゆる新築プレミアムがあり、中古になると少なからずは値落ちする場合が一般的である。しかし平成バブルの時代新築マンションの価格を中古マンション価格が上回るという事態が起こった。これは当時国土法という土地の取引価格の上限規制があったことに起因していた。現在国土法は存在しないが、中古マンション、特に都心立地物件は新築時の分譲価格を凌駕するものが散見される。

 2月1日開札ではJR総武線「浅草橋」駅徒歩約5分に立地する築2年半の新しいマンションが対象になった。この物件が分譲された当時は既に都心のマンション相場は急騰していた。そんな中今回開札対象マンション住戸は専有面積約12.3坪であるが、これが約6500万円で分譲された。専有面積坪単価で500万円を優に超える水準である。これが今般売却基準価額4088万円に対し、入札6本で最高価5960万円にて競落されていった。この競落水準は新築分譲の価格に比すれば9%程度は低いが、競落会社が再販するときはそのマージンや経費を考えればほぼ同等であろう。都心築浅マンションは値落ちが無い状況である。

 ちなみにこのマンションの評価書を見ると売却基準価額設定にあたり積算価格に価格補正として80%もの上乗せをしている。競売マンションをもはや積算方式によって評価するのは現実的ではなくなっている。これはタワーマンションの相続税評価額が実勢と比しかなり低い水準であることと一脈通じていると思う。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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