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東京競売ウォッチ

2021年1月19日

第536回 2020年東京地裁競売市場の総括(1)

 昨年2020年は東京地裁本庁の競売開札対象物件は表1のとおり24.6%と大きく減少した。これは裁判所の機能一時停止のほか政府の金融支援策で倒産が抑止され、結果物件差押え件数が減少したことによろう。全国の銀行などの貸出残高はGDPを超え570兆円にまで達していて、地方銀行の預貸比率100%超の報道もある。これらのことが倒産減少と競売物件減少という結果を招いている。さらに東京信用保証協会の保証件数、金額ともに一昨年比で4倍超まで膨らんだ。これも東京の企業に対する倒産そして差押えが抑制されたことを裏付けている。

 一方で競落率は前年比0.7%と僅かながら上昇しており競落競争が激しさを増した感がある。一方で表2の売却基準価額に対する落札価格の上乗せ率を見ると昨年からは競落物件全体では22.3%低下している。やはりコロナ禍で競落水準が低下したと見られる。しかしマンションを見ると僅か2%に満たない低下である。しかも東京地裁では近時売却基準価額を市場価格修正として高め設定を行ってきており、それを勘案するとむしろ競落水準は上がっていると考えることもできる。一般市場においての中古マンション市場が好調であることを反映しているようだ。次号は今年の競売市場を占ってみる。


山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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