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東京競売ウォッチ

2024年06月11日

第700回 土壌汚染で計画頓挫か

 本欄で「まだ続くかぼちゃの馬車の残像」として破綻したシェアハウス事業の債務整理が競売市場で続いていることを取り上げた。5月29日開札においても同様にこの「かぼちゃの馬車」の破綻処理物件があった。その物件は東京メトロ半蔵門線「押上」駅から徒歩約8分に立地した土地であった。これまでの「かぼちゃの馬車」破綻処理物件は建物が建っていたが、本件については更地であった。その土地は南側で幅員約3mの公道に面し、セットバックを考慮した面積は約14坪である。2017年9月に投資家は本土地を購入し、このときスルガ銀行が債権額7030万円の抵当権を設定している。そして同年12月に同じくスルガ銀行が2つの抵当権、債権額合計4600万円の抵当権を追加設定している。この投資家は合計で1億1630万円の負債を背負ったことになる。しかも建物は未着工の状態であり、おそらくは建築確認が取得されたタイミングで建設代金の一部の支払いがあったのではないだろうか。ところで今般の競売の評価書を見ると、この土地上では金属製品製造業の工場があったことで専門家から本土地には土壌汚染リスクがあることが指摘されている。そしてそれに伴う評価減(10%)がなされていた。もしかするとこの点で建設計画が頓挫したのかもしれない。それにしても破綻処理に約7年の長い時間を要している。

 本土地入札結果は売却基準価額1851万円に対し19本の応札があり、最高価5005万円強にて競落されていった。これは路線価の2.5倍を超える価格であり、高水準の競落に驚かされた。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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