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東京競売ウォッチ

2015年8月25日

第289回 一次取得層向けマンション

 東京の中古マンションの売買が活発と聞く。それを受けて東京地裁でもマンションへの大量入札が多く見られる。7月23日開札でも1番人気はJR埼京線「北赤羽」駅徒歩約3分に立地する築8年の3LDKの部屋で、47本の入札があり、売却基準価額の約1.5倍で競落されている。

 しかし、一方でこの日、マンションでありながら売却基準価額未満で競落された物件があった。それはJR常磐線「金町」駅徒歩約31分に立地する専有面積約17坪の3DKの部屋であった。築年は30年未満と、新耐震構造で古いとは言えない。ところが、専有部分については、かなり荒れた状況のようで、現況調査報告書には、「現状のまま使用するのは困難であり、全面的改修が必要である」とある。

 しかし、売却基準価額は439万円で、滞納管理費等約65万円を考慮しても、専有面積坪単価は30万円未満である。昨今の好調と言われる中古マンション市場においては大量な入札があってもおかしくないが、結果はわずか3本に止まり、競落価格は406万円で再販業者が落札していった。かなり低い水準に思うが、先に記したように内部の全面的改修工事を要し、そのコストを考えてのこととは思う。それにしても低い。フルリフォーム後でも1,000万円未満の再販の売値であろう。それでも市場的には、即売却ということでもないのかもしれない。これらの競落結果はマション市場における格差を表しているように思う。

 この日、同じく「金町」駅から徒歩22分で、築年もほぼ同じ物件が入札4本しかなかった。一次取得層向け物件は給与が伸びていないことなどからか、売値は上昇していないようだ。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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