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東京競売ウォッチ

2012年2月14日

第123回 借地権付建物に入札22本

 1月19日開札において、借地権付建物に対し22本もの大量入札が集まったのに目を引かれた。

 その物件は都営浅草線「西馬込」駅徒歩約3分に立地し、土地(借地権)は北側で幅員6mの公道に面し、面積は約27坪ある。その上に木・鉄筋コンクリート造、築約18年の3階建て、延床面積約41坪の戸建てが建っている。

 売却基準価額1,581万円に対し、最高価2,550万円にて落札されていった。借地権付建物であるのに大量入札で、かつ大きな上乗せ率であったが、その理由は底地の所有者が財務省であることにある。

 底地は相続税の物納されたもので、それがゆえに借地権者との土地賃貸借契約は整備され、また敷地の測量もなされている。さらに競落による土地賃貸借契約の名義書換についても、所定の名義書換料を負担することによって、円滑に行ってもらえる。その名義変更料の額も、土地の正面路線価に借地権割合を乗じ算出される借地権価格を目安とした、借地権評価額の10%と、わかりやすく、事前に予定が立つ。ちなみに、評価書中における名義変更料は約190万円となっているが、実際にその程度であろう。

 また、競落人は財務省に対し、名義変更を行えば、その後は当該底地を買い取ることも可能である。底地の売買価格は同じく路線価から計算される、底地評価額が目安になる。

 しかもこれら、名義変更料と底地の買取価格は、あらかじめ問い合わせることも可能である。借地権付建物であっても、財務省が地主の物件は、コストさえ見ておけば、所有権化が容易にできることから、再販業者も多く、入札に積極的に参加するのである。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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