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東京競売ウォッチ

2016年9月13日

第338回 1棟物件の超高額競落

 今週と来週で、今年の8月までの競売市場を振り返り、今後の市場を占ってみようと思う。

 2016年の競売市場は依然縮小にあり、8月までの8カ月間で対象物件総数は525物件であった。1カ月66物件弱であり、このままでは1年間で800物件を切る可能性もある。競売市場から商品をもっぱら仕入れていた会社は商品不足に悩まされている。とくに、共同住宅の1棟物件はかなり少なくなっている。物件が少ない中、1棟物件が対象となると、大量の入札が集まる。今年最高の入札本数を集めたのは、3月10日に開札された新大塚の1棟の共同住宅で88本もの入札があった。競落水準も高く、この物件は実質利回り年4%での競落になる。

 また、5月24日開札に対象となった1棟の事務所店舗にも65本の入札が集まった。その物件は東急東横線「学芸大学」駅徒歩約2分という好立地であり、売却基準価額4,156万円の5倍を超える2億1,000万円で落札されていった。この物件、建物は古家であり、評価ゼロであろう。そこで土地競落価格を対路線価で見ると、5倍を超える水準になる。

 今年、競落価格が一番高かったのは3月10日開札で対象となった東京メトロ日比谷線「八丁堀」駅徒歩約3分に立地する昭和40年築の事務所ビルである。売却基準価額6億8,554万円のところ入札は23本であったが、競落価格は40億100万円で、売却基準価額の6倍近い高水準であった。なお、この高い競落価格を誘引したのは、むしろ競売であるから占有排除がしやすいという部分もあったと思われる。

 以上、1棟物件の超高額競落に驚かされた今年の8カ月間であった。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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