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東京競売ウォッチ

2022年6月7日

第604回 かぼちゃの馬車に入札3本

 約4年前世間を騒がせた「カボチャの馬車」事件、過大な債務を抱えた投資家が多く残された。事件後一部投資家は金利低減などの措置が施され、賃貸経営を継続しているケースもあるが、一方で破綻してしまったケースもある。

 5月19日開札ではJR常磐線「金町」駅徒歩約16分の「カボチャの馬車金町Ⅳ」が開札対象になった。この物件、幅員2mの敷地延長の約50坪の敷地に木造2階建で延床面積約40坪のシェアハウスが建っている。このシェアハウスは居室(1室約4.5畳)12室から成り、現在エステティック会社の従業員寮として月額30万円で賃貸されている。(1室月額2.5万円にあたる)

 この物件の売却基準価額は2800万円であったが、これに対し入札は3本にとどまったものの、上乗せ率40%超、最高価4023万円にて競落されていった。現在の賃貸状況であれば年9%弱の表面利回りが得られるので、その点では高いとは言えない競落価格ではある。しかし、地形が劣る土地であり、また最寄り駅からの距離もあることで、応札者が少なかったのだろう。

 また現在の従業員寮としてのテナントが将来にわたって賃借するかは不透明であり、仮に退去してしまえば、リテナントに苦戦することも考えられる。その点においても入札が躊躇われたように思う。カボチャの馬車、その後の処理は2年前くらいから徐々に行われている。取得後の運用方法にアイデアがあれば面白い入札対象ではなかろうか。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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