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東京競売ウォッチ

2011年1月31日

第76回売却基準価額1万円

 1月18日、今年初めての開札であった。そして、この日、珍しいことに売却基準価額1万円のマンションが2物件開札になった。しかも、そのうちの1物件については、この日の1番人気となる41本の入札を集めた。

 その物件は東京メトロ日比谷線「入谷」駅徒歩約10分に立地する築20年強の1K、専有面積約4.5坪の部屋であった。この物件がわずか1万円の売却基準価額であるのは、この物件に、買受人が債務を承継しなればならない滞納管理費等、およびその損害金が多くあるからである。

 この物件の評価書を見ると、市場価格は440万円弱である。これに競売減価を3割施したところで、滞納管理費等と、それに関わる遅延損害金合計約380万円を差し引くと、70万円超のマイナスになってしまう。売却基準価額はマイナスというわけにはいかないので、1万円としている。

 この滞納管理費等は16年間にも及ぶ滞納の結果である。滞納管理費等は定期給付債権として、5年の時効とされることから、管理会社が支払い督促など、法的請求を所有者に行っていなければ、時効を援用して大幅に支払い債務を減額できるチャンスもありそうだ。そんなチャンスも考慮してか、落札価格200万円強で、個人が落札していった。

 もう1物件は練馬のワンルームで、500万円近い滞納管理費等がある物件であったが、これには21本の入札があり、162万円強で業者が落札した。

 ちなみに、この物件、昨年7月に256万円にて競落されたが、代金不納付で再入札になっている。入札保証金がわずか2000円なので、落札してから本当に購入するか否かを考え、結局購入せず、入札保証金を放棄したようだ。売却基準価額が極端に少額であるために起こる現象と言えよう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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