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東京競売ウォッチ

2024年02月20日

第686回 好立地築古マンション再入札

 都心マンションの価格上昇は変わらず続いている感があり、昨週本欄で紹介の港区のマンションについて、占有関係に不透明さがあるものの、売却基準価額に対し約77.5%の上乗せ率であった。一方で郊外の新築販売物件の売れ行きが良くない話が聞こえるようになってきた。1月31日開札ではJR常磐線「金町」駅から約2.4㎞離れたバス便物件が対象になった。この物件、土地は南側で幅員約4.5mの私道に面した約20.4坪で、建物は築5年強の木造2階建て、延床面積が約23坪の一戸建てであった。

 この物件の入札結果は売却基準価額2174万円に対し10本の入札があり、最高価2685万円にて再販業者が競落した。売却基準価額に対する競落価格の上乗せ率は約23.5%で、先のマンションの上乗せ率の3分の1以下である。

 この物件の評価書を見ると正常価格として積算された建物価格は1376万円、土地価格は1392万円であった。これら土地建物の正常価格合計2768万円に対し競売減価20%を施すなどして先の売却基準価額2174万円が導かれている。

 都心マンションの競落価格は正常価格の2倍程度となる例が多いところ、先の戸建ての競落価格は正常価格を下回る結果になっている。しかもこの戸建ては所有者居住であり、占有関係は複雑ではない。この競落結果は郊外の一戸建て市場が振るわなくなってきていることを反映しているように思う。

 ただマンションの上乗せ率も都心・準都心物件に比して郊外で且つバス便物件などはかなり低いという現状もある。マンションか戸建てか、所在する地域がどこか、で格差広がる上乗せ率である。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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