リアナビ

スペシャリストの眼

東京競売ウォッチ

2017年2月21日

第358回 国税局による公売もレポート

 本欄では今年、国税局や東京都主税局などが実施する公売についても、随時レポートしてみたいと考えている。というのも、東京地裁においては周知のとおり対象物件が数年縮小しており、今年は歯止めが掛かりそうではあるが、増加に転ずるかは不透明である。

 しかし、公売物件数は競売物件のような減少ではなく、むしろ微増傾向とも感じられる状況である。実は14年から15年にかけ国税の滞納件数が増加に転じていて、公売対象物件数の増加を裏付けている。競売への入札参加を主に行っていた再販業者も、ここのところ国税局等の公売に多く参加している。

 また、国税局は公売対象物件数の効率的な処理などを期してか、これまで期日入札を原則としていたところ、期間入札を主たる方法に変えてきている。入札の郵送受付方法などによって、入札参加者も今後増加するのではないだろうか。そんな背景があり、その競落状況の一部もレポートしたいと考えた。

 ちなみに今年最初の国税局の開札は1月17日であったが、その中に東京メトロ有楽町線「江戸川橋」駅徒歩約4分に立地する専有面積約12坪で、1LDKのマンションが対象になっていた。築35年経過しているが、管理状況は良好な物件である。

 この物件の見積価額(最低に有効な入札価額、競売でいう「買受可能価額」)は1,940万円であったが、競落された価格は2,205万円であった。また滞納管理費は12万円弱と、あまり大きい額ではない。いわゆる見積価額に対する上乗せ率は15%未満であり、競売に比して似たようなマンションの競落事例と比較すると、小さい感じを受ける。

 公売には競落後の引渡命令制度がなく、また代金の納付が競落後1週間という厳しさがある。しかし、競落競争が競売より少ないとなれば、再販業者は今年さらに公売を注目するようになるのではないだろうか。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


BackNumber


Copyright (c) 2009 MERCURY Inc.All rights reserved.