リアナビ

スペシャリストの眼

東京競売ウォッチ

2012年12月18日

第162回 西麻布の商業物件

 年末に向け選挙戦が激しくなってきている。選挙後、自民党中心の政権となると、金融緩和策が強まるとの見方から、株価は上昇基調のようだ。

 当然、金融超緩和策は、土地についても価格の底上げにつながる。とりわけ過去の例から、都心の商業地にその影響がまず出始めるだろう。

 さらに都心でも、千代田、中央、港の3区が先頭になる。競売市場においても、これら都心の商業地の競落状況が気になるところである。

 11月22日開札で、港区西麻布4丁目に立地する土地付建物が対象となった。その物件は土地が南西側で幅員4m弱の公道(2項)に面する約50坪。建物は築22年の鉄骨鉄筋コンクリート造で、地下1階付の4階建て、延床面積が約147坪ある。

 主に飲食店が賃借し、占有しているが、現在の賃料水準で、月額160万円程度、年約2,000万円の賃料収入が見込めるだろう。

 そんな内容で、売却基準価額は1億4,214万円であったが、これに対し、入札が8本あり、最高価1億8,234万円にて落札されていった。

 ただし、本物件の地下1階については、買受人が敷金等約650万円を継承する義務があるので、実質では1億9,000万円弱の競落ということになる。

 この競落水準は、おおよそ賃料に対して表面利回り10%強である。取得にあたって、その他経費を勘案し、かつ収入面では固定資産税等のコストを斟酌すれば、実質年8%程度の利回り水準ではないだろうか。

 共同住宅の物件に比し、まだ利回りが高め(競落価格は低め)に感じる。今後こういった商業物件の競落水準がどうなっていくか、気になるところである。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


BackNumber


Copyright (c) 2009 MERCURY Inc.All rights reserved.