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東京競売ウォッチ

2016年4月19日

第319回 無道路地の借地権付建物

 対象物件が減少し、過熱化する競売市場で、商品化が難しそうな物件にも立地が良いものについては入札がある。3月10日開札で、借地権付建物で接道がない再建築不可の物件で、かつ建物が昭和15年建築という物件が落札され、目を引かれた。

 その物件は京王井の頭線「永福町」徒歩約3分に立地する。土地は約15坪の借地権で、地代は月額16,000円である。問題はこの土地が道路に面していない無道路地であることだ。東側の道路へは幅約1mの共用通路を通って出入りする形である。

 このような無道路地は旧法借地権ではよく見かける。これは地主の土地を数件が寄り集まって借りて建物を建設した際、その区割りについて、接道条件を意識して行っていなかったことから生じている。ことに本件は昭和15年の建設ということで、建築基準法などなかった時代である。

 また本件はその借地権の範囲が東側道路から一番離れたところにあり、接道義務を果たすべく形状変更など最もしにくい状況である。

 建物はまだ使用されていて所有者が居住している。床面積は約20坪ほどであるが、4Kの間取りである。この物件の売却基準価額は285万円であったが、入札は2本あり、最高価333万円にて落札されていった。

 さて、このような無道路地で、借地権の物件をどんな目的で競落したのであろうか。筆者が推測するに、競落者は現建物に手を入れて、シェアハウスなどにして賃貸運用を考えているのはないだろうか。

 立地が良いので、妙味はあるかもしれない。ただし、本件地主は(おそらく借地権者の建物が競売付されたことで)土地賃貸借契約の解除の意思表示をしている。そのため競落者が今後行う地主との名義変更や建物改装の承諾に関する交渉は難しいものになるかもしれない。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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