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東京競売ウォッチ

2012年9月25日

第153回 一般市場にない借地権付建物

 競売市場において、一般市場より、その出現割合が高いのが借地権付建物である。とりわけ借地権について争いがあるものなどは、まず一般市場にはない。しかし、競売ではそのような物件が散見される。

 8月30日開札では、都営新宿線「西大島」駅徒歩約18分に立地する「建物」(築43年の木造、延床面積約22坪の共同住宅で、有効な接道がなく再建築不可。現況空き家状態)が開札対象になった

 この物件はそもそも借地人と地主との間で借地契約が存在していたものの、地代不払いによってその契約が解除されたようだ。

 そして、その後、裁判によって地主は建物収去・土地明渡訴訟の勝訴判決を得ている。そのため、今回の競売対象は「借地権付建物」ではなく「建物」なのである。

 さて、この建物の競売を申立てたのは、実は地主であった。地代債権に基づいて建物を差押え競売に付したのであろう。

 ところで、この建物は未登記であったようで、この競売の差押にあたり、建物の表示登記が行われている。そしてさらには、所有者の所有権保存登記も併せて行われた(申立人である地主の負担と思われる)。

 さて、この物件の売却基準価額は44万円であったが、入札は2本あり、最高価175万円にて申立てた地主が競落した。地主以外の入札が1本あったが、地主のほかでは、資産として活かせせるとは思えない。

 しかし、地主にしてみれば手間と費用がかかったとはいえ、長年放置され、地代収入もない借地関係をこの競売で整理できたのである。

 今後、利用されなくなり、地代滞納が膨らんだ借地権付建物について、その権利関係整理に、競売が活用されることが多くなるかもしれない。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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