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東京競売ウォッチ

2012年7月31日

第146回 マンション入札にばらつき

 東京地裁では、競売対象物件の約3分の2がマンションである。

 そして、そのマンションの競落率は居住用でない特殊な物件以外は、ほぼ100%に近い状況で推移してきていた。しかし、このところややその入札傾向に変化が見られる。

 7月5日開札で、大量40本の2番人気の本数を集め落札されたのは、JR総武線「新小岩」駅徒歩約7分のマンションであった。築11年と比較的新しいこともあってか、売却基準価額の60%弱の高上乗せ率で競落されていった。

 一方で、この日2つのマンションが入札なく、特別売却に回っている。

 その1つが都営三田線「高島平」駅徒歩約18分に立地する専有面積約14坪の2DKの部屋であった。売却基準価額642万円(買受可能価額513.6万円)と、買受可能価額ベースで滞納管理費(約50万円)を考慮しても、専有面積坪単価は40万円程度である。しかし、応札はなかった。

 もう1物件は、東武伊勢崎線「竹ノ塚」駅徒歩約18分に立地する、専有面積約20坪の2LDKのマンションである。売却基準価額は784万円(買受可能価額627.2万円)であり、先の物件と同じく滞納管理費約70万円を考慮しても、専有面積坪単価35万円未満で取得できたのにもかかわらず、不落札であった。

 この2つのマンションに共通していることは、まず駅から遠いこと。それから築年が昭和50年代中頃ではあるが、新耐震基準構造でないこと、そして、全体戸数が30戸未満と小さいことなどがある。さらに、竹ノ塚のマンションについては1階住戸であるという好まれない条件がある。

 最近のマンション市場では、物件ごとに売れ行きにばらつきが目立つとの話をよく聞く。競売のマンションも物件ごと、入札にばらつきが生じてきているようだ。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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